情けは人のためならず

 

 

 

本屋の駐車場を出るときに、白い車に先を譲った。
運転していた女性がにっこり会釈をしてくれた。
何だか気持ちがいい。
ちょっとした心遣いをしてみたら、
こちらの気分が明るくなった。
情けは人のためならず、だね。

行き先が同じ方向だったので、
ぼくはその車の後ろを続いて走る。
日差しは強いが、
まっすぐ続く道は快適そのもの。
気持ちがいいねえ。

と、そのとき。

道の脇から赤い旗を振りながら、
いきなり飛び出してくる馬鹿者が。

わあああああああ。

ネズミ取りである。

何ということだろう。
本来ぼくの後ろを走っていたはずの
あの感じのいい奥さまが、
憎き官憲の手に捕まってしまった。
ぼくが先を譲ったばかりに。

すまねえ。
あっしのせいで、そんな目にあわせちまって。

もしあそこで先を譲っていなかったら、
当然ぼくがつかまっていた。
速度超過アーンド免許不携帯アーンド授業に遅刻。
そんな最悪の事態を免れることができたのは、
たまたま駐車場で、先を譲ったからにほかならない。

まさに、情けは人のためならず、であった。
それとも、情けは人のためにならず、だったか?

ときとして、幸運は人の犠牲の上になりたつ。
人生は無情だ。