ジョージくんへのてがみ

 

 

 

久しぶりにテレビを観たら、
君が熱っぽく演説をしているところだった。
「無法国家の独裁者」とか、
「世界の平和に対する明白な脅威」
なんてことをさかんに訴えていたから、
ぼくは君が自己紹介でもしているかと思ったよ。

いや、誤解するなよ、ジョージ。
そりゃマリオやルイージは好きだが、
だからと言って フセインの肩を持つ気はないんだ。
しかしな、ジョージ。
たしかにあいつはろくでもない奴だが、
君がよそんちにどかどか踏み込んで、
いきなり殴りつけることはないんじゃないか。
相手はともかくも独立国家なんだし、
第一 「疑わしきは罰せず」というのが
法治国家の常識じゃないか。

ジョージ、しっかり聞いてくれ。
サリンを撒いて無差別に人を殺したような
許し難い犯罪を前にしても、
法の定める手続きを踏むことなしには
罰を与えることはできない。
君は納得できないかもしれないけれど、
法治国家というものは
こうでなければならないんだ。

国家という基盤が、融通を利かせたりもせず、
愚直に法を守ってくれるからこそ、
ぼくたちは安心して生活することができる。
何が言いたいか分かるかい、ジョージ。

なあジョージ、
君たちは世界のよりどころなんだ。
君たちが正義を踏みにじったら
ぼくたちは誰の正義を頼みにすればいいんだ。
君たちは正義のよりどころなんだ。
その君たちが、
疑わしきは罰するのが当然だ、
という恐ろしい理屈を、
正論のような顔をして振り回すのをみていると、
一見してそれと分かるアブナイ連中よりも、
ずっとおそろしい気がするぞ。

今回の査察にあたって、
世界中の平和を愛する人々は、
「どうか兵器がひとつも出て来ませんように」
「戦争がなんとか避けられますように」
と祈っていたらしいが、

どこかの白い建物からは
「核兵器と生物兵器がざくざく見つかりますように」
という祈りが聞こえたらしい。

ほんとうか、ジョージ。