終わりなきペンギンの苦悩

 

 

 

コウテイペンギンは、今日も悩んでいる。

エサを採るには海に潜らなければならない。
しかし、うかつに海に飛び込むと
恐ろしいヒョウアザラシの餌食になってしまう。

だれか飛び込んでくれないかなー。
そしたらアザラシがいるかどうか分かるのになー。

そんな身勝手なことを思いながら、
彼らは水際にぎっしりと立ち並んだまま、
最初の一羽が飛び込むのをのをじっと待っている。

じっと待つ。じっと待つ。じっと待つ…のだが、
いつまでも待っているわけにはいかない。
そんなままではやがて飢え死にしてしまう。

待つも地獄、進むも地獄。
さあ、彼らはどうするか。

R.ドーキンスの「利己的な遺伝子」によれば、
解決策は、こうだ。
「…ときどき互いに押し合って、
誰かを水中に突き落とそうとする」!

どひゃーっ!
生き物の業(ごう)というか、
生きている哀しさを感じるのだけど、
やっぱり笑っちゃうんだなあ、こういうの。
とぼけた顔をして、ぐいぐい押し合う姿というのは、
想像するだけで、ただごとではない。

さて数日前、NHKが極地に生きる動物を特集した。
そこには、こんな光景が映し出されていた。
主役はまたも、われらがコウテイペンギンである。

ペンギンたちは
何百羽かでひとかたまりになって、
吹きすさぶ激しい氷雪の中、
からだ中を凍りつかせながら身を寄せ合って
じっと立っている。
そうしているのがいちばん暖かいから。

それでもいちばん外側に立つペンギンは、
零下50度の吹きっさらしだ。
寒いどころではない。白く凍りついたその姿は、
冷凍マグロを立てて並べたようだ。

そうやって、
自分のからだを楯にすることによって、
仲間を寒さから守っている。
凍りつきながら表情も変えず、
当然のような顔をして、
猛烈な風と雪を引き受けている。

立ち続けるペンギンよ、
いくら仲間が暖かくなったって、
お前は寒いばかりじゃないか。

ああ。

アザラシ怖さにぐいぐい押し合うのも、ペンギン。
わが身を楯に仲間を守り続けるのも、ペンギン。
何だか、人の世が透けて見えるようじゃないか。



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