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たったひとり無人島で暮らすことになりました。
ひとつだけ、どんなものでも持って行けるとしたら、
あなたは何を持っていきますか。
なんて質問は、相手の人間としての程度を試すようであまり気持ちの良いものではない。
なんせ、たったひとつである。
たったひとつのもので、自分の人となりを余すところなく表現しなくてはならない。
あるいは、ああ、そうか、それがなくちゃ生きていけないよね、とか、
暇つぶしにはそれがいちばんいいよね、とか、
なるほど、気がつかなかったけど人としていちばん大切なのはそれだね、
なんて言ってもらわなくちゃいけない。
なかなか難しいのである。
ある調査では、1位「ナイフ」2位「最愛の人」3位「携帯電話」4位「ラジオ」5位「本・マンガ」6位「マッチ・ライター」7位「水」
8位「食料」9位「パソコン」10位「寝具」だそうだ。
そのほかには「ドラえもん」とか「どこでもドア」とか、ま、そうだよね、というものが並ぶ。
「楽器」「ペット」「釣り道具」「ボート」なども分かる。
「メガネ・コンタクト」は切実だ。ぼくは近視だから、眼鏡がなければ、木の実ひとつ見つけられない。
「サバイバル本」というのは、ひ弱なのかたくましいのか分からなくておもしろい。
中で目を引いたのは、自分で命を絶つための「睡眠薬」という答。うーん、実際にそうなったらいちばん欲しいものかも知れないなあ。
そんな風にいろいろ考えられるけど、ぼくは意外と「書くもの」が欲しくなる気がする。
気を紛らす余裕も必要もないだろうから、娯楽的なものはいらないし、
それなら本、とも思ったが、読むことはおそらく自分の未来を築くための行為だから、明日をも知れぬ身となれば、きっと読まなくなるだろう。
一方書くことは、未来を作る行為ではなく、今の自分を過去のものとして記録し固定することだ。
自分というものがこの世界に存在した痕跡を残そうとすることだ。
希望もなく今日を生きるしかない無人島にひとり残されたとき、最後に残る衝動は、「読む=未来に備える」ではなく「書く=自分の痕跡を残す」なのではないか。
だからきっと紙と鉛筆が、いちばんじゃないかもしれないけど、すごく欲しくなる、と思うんだ。
もっとも個人的には、
「ひとつだけ? じゃ、東京都。」
ってのがいちばん好きなんだけどさ。
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